ベストエフォート型とは「通信速度」という保証がないインターネット回線のことです。
あまりにもリスキーな回線だなと思う人もいるかもしれませんが、ネット回線のほとんどが「ベストエフォート型」を採用しています。
これを知らないで「思ってたよりも遅いから」と解約してしまうと、乗り換え後も結局速くならない…
なんてことが起きかねません。
そうならないためにも、「ベストエフォート型」について記事内で分かりやすく解説します。
ベストエフォートとは
- ベストエフォートの意味は「最大限の努力」
- ベストエフォート型のインターネット回線は「通信速度の保証がないサービス」
- ベストエフォート型の反対はギャランティ
- ベストエフォートが採用される理由は料金が安いから
ベストエフォートの意味は「最大限の努力」
ベストエフォート(best effort)とは、日本語で「最大限の努力」という意味です。
状況によって品質や性能が変わるサービスにおいて「品質の保証はしないが、最大限の努力(ベストエフォート)をする」という意味で使われます。
ベストエフォート型のインターネット回線
ベストエフォート型のインターネット回線とは、「通信速度の保証がない」サービスです。
インターネット回線の広告などで「最大通信速度1Gbps」という表現がよく使われます。
この最大通信速度というのは、あくまで通信速度の上限です。
実際の通信速度は、回線の混雑状況や通信機器の性能によって変化します。
ネット回線の通信速度は、使っているPCや回線の利用者数などの外的要因に左右されます。
例えば古いスペックのPCを使っていたり、一時的に利用者数が多い時間帯になったりすると、速度が落ちてしまうのです。
ネット回線事業者側ではコントロールできないため、「保障はしないけど努力はするよ」と言わざるを得ない…ということに。
これに関してはしょうがないことで、ネット回線を利用するうえで理解しておかなきゃいけないことですね。
ベストエフォート型サービスとは、最大速度及び接続可能性に関して保証せず、特定の条件下など可能な場合にのみ最大限の速度での通信が可能となる方法です。回線の混雑状況や通信環境などにより、通信速度は低下する場合があります。
引用元:『インターネットの現状と品質の測定につきまして』JAIPA
ベストエフォートの反対は「ギャランティ」
ベストエフォートの対義語として、通信速度を保証してくれるサービスが「ギャランティ(guarantee)」です。
ギャランティは日本語で「保証」という意味です。
ギャランティ型のサービスでは、10Mbpsや100Mbpsといった最低速度が保証されています。
最低速度を下回る場合には料金の一部返還などの賠償される…というわけです。
魅力的に感じる一方で専用設備の設置などでコストが高くなるデメリットもあります。
次に解説しますが、あまりにも高額なため、一般ユーザー向けではなく企業向けのサービスと思っておきましょう。
ベストエフォートが採用される理由
通信速度が保証されていないベストエフォート型が広く普及しているのは「料金が安いから」です。
ギャランティ型のように専用の設備や回線の確保が必要ないため、安い料金で提供できます。
試しに、NURO光のベストエフォート型とギャランティ型の料金を比較してみましょう。
NURO光 (ベストエフォート) | NUROアクセス (ギャランティ) | |
月額料金 | 5,200円 | 10M:20,735円 30M:55,000円 50M:165,000円 ※数字は最低保証速度 |
開通工事費 | 44,000円 | 55,000円 |
初期費用 | なし | 165,000円 |
事務手数料 | 3,300円 |
NUROアクセスは、10Mbpsの保証でNURO光の4倍近い月額料金になります。
保証速度が上がるとさらに料金が高くなります。
さらに初期費用や開通工事費も高額なため、一般の人へ提供するにはあまり現実的な金額ではありません。
そのため、低コストで利用できるベストエフォート型が一般向けサービスとして普及しています。
ベストエフォート型インターネット回線を契約するときの注意点
ベストエフォート型インターネット回線を契約するときの注意点は、以下のとおりです。
最大通信速度だけで判断してはいけない
記事内で解説しているとおり、最大通信速度だけで判断してはいけません。
あくまでベストエフォート型のため、最大通信速度が出るとは限らないからです。
最大通信速度とは、回線の混雑状況や通信設備が理想的な状態にあるときの通信速度の上限です。
この速度でインターネットが利用できることを約束するものではありません。
つまり「最大通信速度1Gbps」というのは「0~1Gbpsの間で利用できる」という非常に曖昧な情報になります。
そのため、インターネット回線を契約する際には、最大通信速度だけでなく実測値も確認することが大切です。
実測値の確認が必須
実測値とは、サービス利用者が実際に測定した通信速度のことです。
実測値が高いサービスであれば「インターネットを快適に利用できる可能性が高い」ということになります。
そのため、インターネット回線の契約をする前に、実測値を確認する方が多いです。
「みんなのネット回線速度(みんそく)」というサイトで簡単に実測値が見られます。
気になるインターネット回線があれば、ぜひ調べてみてくださいね。
実測値の調べ方
※地名なしでも検索できます。
通信速度を調べるときは、下の「通信速度の目安」も参考にしてください。
下りとは、インターネット上からパソコンやスマホにデータを受信(ダウンロード)する方向を表します。
用途 | 下り速度の目安 (ダウンロード) |
---|---|
メッセージの受信 | 128Kbps~1Mbps |
サイト閲覧・ビデオ通話 | 1Mbps~10Mbps |
動画視聴(YouTubeなど) | 3Mbps~25Mbps |
オンラインゲーム | 30Mbps~100Mbps |
ベストエフォート型インターネット回線を快適に利用する方法
ベストエフォート型は回線の混雑等の影響で通信速度の保証ができないサービスです。
ただ、通信方式や使用する機器を替えるだけで、通信速度が大幅に改善されることがあります。
現在インターネット回線利用の際は、これからご紹介する2つの「ベストエフォート型インターネット回線を快適に利用する方法」を試してみてください。
IPoE方式を利用する
IPoE方式とは、回線が混雑しにくい通信方式のことです。
従来のPPPoE方式という通信では、インターネットに接続する際に網終端装置という場所を経由していました。この網終端装置が混雑することで速度低下が起こります。
対するIPoE方式では、インターネットに接続する際に網終端装置を経由しません。そのため、利用者が多い時間帯でも回線が混みにくく、快適にインターネットが利用できます。
光回線サービスでは「IPv6オプション」や「v6プラス」というオプションで、IPoE方式を利用する事ができます。また、標準装備になっているサービスも多いです。
気になる光回線サービスがあれば、IPoE方式が利用できるか確認してみてください。
機器の見直しをする
通信速度の原因は回線速度の低下だけが原因ではありません。
利用している機器の規格によって通信速度が遅くなることもあります。
光回線利用の際は「ルーター」「ケーブル」の規格を確認してみてください。
ルーターの規格
下の表は、ルーターの無線LAN規格とその最大通信速度です。
最大通信速度が1Gbpsのサービスを利用している方は、11ac以降の規格に対応しているルーターを利用しましょう。
無線LAN規格 | 周波数帯 | 最大通信速度 |
---|---|---|
IEEE802.11a | 5GHz | 54Mbps |
IEEE802.11b | 2.4GHz | 11Mbps |
IEEE802.11g | 2.4GHz | 54Mbps |
IEEE802.11n (Wi-Fi4) | 2.4GHz 5GHz | 450Mbps |
IEEE802.11ac (Wi-Fi5) | 5GHz | 1.3Gbps |
IEEE802.11ax (Wi-Fi6) | 2.4GHz 5GHz | 9.6Gbps |
LANケーブルの規格
LANケーブルも規格によって通信速度が異なります。
通信速度にこだわりのある方は、最低でも「CAT6」以上のケーブルを利用しましょう。
カテゴリ | 最大通信速度 |
---|---|
CAT8 | 40Gbps |
CAT7 | 10Gbps |
CAT6A | 10Gbps |
CAT6 | 1Gbps |
CAT5e | 1Gbps |
CAT5 | 100Mbps |
ベストエフォートに関するよくある質問
- ベストエフォートとはどういう意味ですか?
-
ベストエフォート(best effort)は「最大限の努力」という意味です。
そして、インターネット回線におけるベストエフォート型のサービスは「速い通信速度を提供できるように努力はするが、最低速度の保証はしない」という意味になります。
- ベストエフォートの反対は?
-
ベストエフォート型に対して、「ギャランティ(guarantee)型」という最低速度を保証してくれるインターネットサービスがあります。
ギャランティ型は法人向けのインターネットサービスとして提供されています。
- ベストエフォート型のインターネット回線ばかりなのはなぜですか?
-
ベストエフォート型のインターネットが安い料金で提供できるためです。速度保証があるギャランティ型のサービスは、専用の設備や多くの人員などでコストが高くなってしまいます。